つまるところ、彼女の存在がなんだったのかってことになると思う。
おかしな女でだった。
娼婦のくせにヒトの心を求めて、うやむやのうちに付き合うことになって、いつのまにかあいつがいなければダメな状況になっていた。
ジースターは血まみれのまま。壁に寄りかかりながら煙草をとりだした。
あれから夜はあけ、そとは白んできている。
今日も仕事にいかなければならない。
不思議なものだ。
いなければいけない存在なんて。
ジッサイ自分がいなくてもあいつは困ることがない。
美人だし、男ならいくらでもよってくることだろう。
自分にしてもあいつがいなくてはいけないわけではない。
仕事は順調だし、生活に支障がきたされるわけではない。
以前はそう割り切っていた。
だが、どうしたことだろうか。
「・・・・・・・・・・・うぐう・・・・・・・・」
一人で呟く。
その呟きを聞くものはなく、ここには自分しかいない。
ぼんやりといままでのことを思い出しながら、壊れて半開きのドアに目をやる。
穴があいた気分だった。
相手が王宮の人物相手なら、自分がどうこうできる問題ではない。
正当なヤツらとはとうてい思えなかったが、だからといってどうしようという問題でもない。
それに彼女自身いっていたようにリリーの仕事は襲われること、こういってはなんだが、否定できない事実ではある。仕事をほっぽらかして逃げてきたならば、それはルール違反というものだ。
彼女はなにをやったかは理解しかねるが、自分が手を出せない領域の問題だった。
そういうことだけは理解がいい自分が憎たらしい。
それと同時になんだかなにかが許せないのだった。
そしてそれに重なるように襲ってくるのは押しつぶされそうな虚脱感。
いつからだろうか。
こんなにも人恋しくなってしまったのは。
「あー・・・・・・・・・・」
口にだして呟いてみる。
これも無機質な壁に反響して、むなしくひろがってくだけだ。
(ちきしょう・・・・・・・あー、くそ・・・・・)
ジースターは心のなかでも毒づいている。
もちろん、彼にそんな寂しさを感じる余裕を与えてくれたのは、他ならぬ彼女以外の誰でもなかった。
自分で気付くはずもないし、彼女がそうおもっているはずもない。
むしろ、あの男から逃げ出したところで、またココに戻ってきてくれるという保証もない。
なにせヤツは困ることはないのだから。
「・・・・・・・・・ふうっ」
息をつくと、ジースターは煙草を灰皿に押し付けて、近くの棚から作業服をとりだした。
いくら辛いことや悲しいことがあっても、破ってはいけない社会のルールがある。
最低限の義務はこなさなければならない。
ジースターにとって仕事にはいかなければならない。
ここまで億劫に感じたのもはじめてだった。
(なんだかなあ)
どうしようもないということはわかってはいたが。
今のジースターにはそれが一番きついのだった。