大きく鐘が鳴り響く。
基地の滑走路の端で、それは執り行われた。
空軍の制服に身を包んだフランクフィールドの軍人たちが整列する。
前方の壇にたったフレミング空軍次長が賛歌の一節とともに、言葉を述べていく。
大きく国旗と空軍の旗が振り上げられる。
賛歌とともに。
シーナの写真がある。
それだけでレオナルドは心が締め付けられそうだった。
「空を飛ぶ者に、神のご加護を」
その言葉の後に、大きく響いた。
「敬礼!」
LEONARD 021
Dark Horse
教会に運び込まれたシーナの体は花で包まれていた。このどこかに納棺される予定だというが、その前に関係者の訪問がゆるされていた。
とはいえ、孤児であるシーナにだれがくる訳でもない。レオナルドは教会にただ一人、シーナの棺桶の傍に立っていた。
傷は縫合され、以前の様に髪や肌も納棺師の手で元通りになっていた。目を閉じたその姿は以前とまったく変わりがない。
レオナルドは彼女の姿を見ながら、小さく呟いた。
「助けてくれて、ありがとう」
そしてアビーのドッグタグを取り出すとそれをしばらく見つめ、そして棺桶の中に落とし入れた。
「そっちで幸せに」
それ以上は言えなかった。
涙がこぼれる。
「幸せに」
目元を抑える。
声がでない。
彼女の胸元に落ちたアビーのドッグタグをしばらく見つめ、それから踵を返した。
教会の外にでると、そこにはスコットが立っていた。
「また泣いてるのか」
「弱虫君だからさ」
そう自虐的にいうと、彼は首を振ってきた。
「それは違う」
「どうして?」
「お前は空でエバンテを撃った。あのとき俺を助け、そして勝った。撃墜宣言した」
「それは......」
「シーナの死は関係がない」
そういうとスコットは少し笑ってみせてきた。
「お前は弱虫じゃないよ。レオナルド」
「悲しくないっていうわけかい?」
尋ねると教会の道路を歩きながらスコットは頭を振って否定してきた。
「関係がないってのはそういうことじゃない。そりゃ仲間が死んだら悲しいさ。それは当然。だけどそれとは別に、飛んでいるときのお前は弱虫なんかじゃないぜって話」
「スコットも悲しいんだ?」
「ああ。俺もだ。人には悲しみ方ってのがある。それぞれな」
付き合いが短かったから泣かない、というわけではない。
きっとそれは付き合いの長さとは関係ないのだ。
軍人だから気にしないでいなければならないというわけでもない。
悲しんでも良いのだ。
その方法を変えるだけで。
サーシャも、アザミも、ジャックも、みんなそうしてきたのだろう。
カテリーナが死んだときも。
アビーが死んだときも。
教会の正門をくぐると、スコットがこちらの肩をたたいてきた。
「そんじゃーな」
「え?」
一緒に基地に戻るんじゃ、と言いかけたがスコットはこちらの後ろに顎をしゃくってきた。
そちらを見ると、彼女が立っていた。
カテリーナと瓜二つの、彼女。
黒い服に身を包んで、髪は後ろで纏めていた。
「よ、ルーシー」
知り合いなのか、スコットが手をあげて彼女に挨拶した。
「ルーシー?」
「あー、いっちゃだめじゃん。せっかくレオナルドには教えないでおいたのに」
彼女が頬を膨らませていってくる。
「ルーシーっていうの?」
「そ」
「なんでここに?」
「妹の墓参り、かな」
にっと笑って彼女は言ってきた。
呆然としているとうしろからと背中を押された。スコットだ。
「いってらっしゃい。大佐には今日は帰らないって伝えておくよ」
驚きの表情でそちらを振り返る。が、スコットはすでに歩き出していた。お礼を言いそびれたことに気づいたが、もう声をだしても仕方が無い。
こちらの腕をつかんでくると、ルーシーが先立って歩き出した。
「いこ、レオナルド」
「どこに?」
「どこか。飲みにでもいく?」
それには答えずにレオナルドは空を見上げた。雲一つない青空だった。
あそこを飛んでいたのだ。
いつかシーナと、二人で飛べたら。
そう考えたときもあった。
最後の最後で、彼女は自分を助け、自分の願いもかなえてくれたのだ。
素敵な女性だった。
本当に。
「綺麗だ」
「なにが? あたしが?」
ルーシーがいってくる。ジョークのつもりだろう。
空から彼女に視線を戻すと、レオナルドはなんとか頷いた。
そうしないといけない気がした、というのもあった。
目に残っていた涙を拭うと、レオナルドは彼女に遅れない様に歩き出した。
"LEONARD -- Dark Horse" Closed